クルミアレルギーについて Medical

クルミアレルギー

近年ナッツアレルギーが増加していると言われておりますが、特にクルミアレルギーに関しては増加しており、実際に診療で出会うことも多いです。
背景にはナッツ全般を食べる頻度が増えていることが指摘されております。
2010年に発表された日本アレルギー学会の調査によると、ナッツ類アレルギーの患者は確実に増えており、特にアナフィラキシー(重度のアレルギー反応)を引き起こす症例が増加していると報告されています。

クルミアレルギー

ここではクルミアレルギーに関して一般的なことを論文なども交えて記事にします。

クルミアレルギーの有病率

クルミアレルギーの有病率に質の高い統計はありませんが、日本ではピーナッツアレルギーは0.2%前後、クルミアレルギーは0.1〜0.3%前後といわれています。
有病率の数字ではあまり変わらないような値ですが、一般的にはナッツ類ではピーナッツが最多で、二番手がクルミと言われています。
世界的にはヘーゼルナッツ(ハシバミ)が二番手とする統計もあります。
ただし、実はピーナッツはいわゆるツリーナッツではなく豆類(エンドウマメに近い)です。
しかし、アレルギーの分類ではナッツアレルギーの中に含まれている習慣があります。

クルミアレルギーの予後

クルミアレルギーは基本的には生涯続くとされています。また、アナフィラキシーになることも多く、その症状も重篤なことが多いとされています。
リスクが高いため、診断が確定した後は完全除去を生涯継続することが多くなっております。
最近の論文では将来的には免疫療法での治癒の可能性を指摘しておりますが、現状確立はされておりません。免疫療法とはアレルギー食品やアレルギー成分を少量ずつ日々摂取することにより体に慣らしていきアレルギーを克服する方法です。
症状が軽い場合や検査での数値が低い場合は、上記の免疫療法の中でも経口免疫療法(OIT)という方法で、少量ずつクルミを定期的に摂取することにより徐々に1回量を増量していき、最終的に克服できることもあります。

参考文献

「Food allergy and immunotherapy: a review of current concepts」(2019)著者:Burks AW, Tang M, Sicherer S, et al. Immunology and Allergy Clinics of North America
「Prevalence, severity, and risk factors of nut allergy in the United States: A cross-sectional study」(2019)著者: Gupta RS, Warren CM, Smith BM, et. JAMA Network Open

治癒の可能性

稀に特に治療なども行わずに反応が軽減するお子さまはいるとされています。成人まで持ち越している場合は基本的には生涯続きます。

小児の場合

クルミアレルギーを持っている子供の場合、アレルギーを克服することがあります。研究によれば、ナッツアレルギーを持つ子供のうち、いくつかのケースでは、年齢とともにアレルギー反応が軽減したり、治癒する場合もあります。しかし、これは少数派のケースであり、完全に治癒するのはまれです。

成人の場合

成人においては、クルミアレルギーが自然に治癒することは非常に稀です。成人の食品アレルギーは一般的に生涯続くことが多いため、クルミアレルギーも例外ではないとされています。

生活上の注意

成分表示を確認

ナッツ類は様々な食品に様々な形で使用されており見た目には判別ができないことも多くあります。よく見かけるものとしてはドレッシングやお菓子、ケーキなどに混入していることがあります。そのため成分表示を確認したり、お店の方に確認しましょう。

外食時の注意

上記と同様に、ナッツ類は様々な食事にも使われ隠し味のように使用される場合もあります。外食時にはクルミアレルギーがあることを伝えましょう。
また、器具などの汚染により、作り手が意図せず混入することもあります。クルミをお店で取り扱っていて調理場にある場合は、使用のたびに器具などを洗ったり特に気をつけていただくように申し添える必要があります。デザートやソース、ドレッシングに使用されることが多いので特に注意しましょう。

自宅では

化粧品やオイルにクルミオイルが使用されいる場合や、ペットフードなどにも注意が必要です。小さいお子さまの場合、誤食することもあります。
手の届かないように環境整備が必要です。

緊急時への準備・対応

クルミアレルギーはアナフィラキシーになることが多いとされています。
診断後は主治医と相談して、アナフィラキシー時の対応を相談して準備しておきましょう。

抗アレルギー剤やエピペンの携帯

誤食した場合や、症状が出現し軽微な場合は抗アレルギー剤を内服します。また、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)の可能性がある場合、アドレナリン自己注射器(エピペン)を行います。そのため、アレルギーの程度によってはエピペンを処方してもらい、日々、緊急時に注射できるよう想定してトレーニングしておくことが必要です。
エピペン携帯の必要性は主治医と相談しましょう。

周囲への周知

家族や友人、学校や職場の同僚にアレルギーがあることを伝え、万が一の際の対処法を共有してください。
特に幼稚園や学校は親御さんから離れた状態で症状が出現します。緊急時の対応をよく話し合っておいてください。

アレルギー管理カードの携帯

アレルギー症状が出た場合に備え、簡単に症状と対処法を記載したカードを携帯するのがおすすめです。
意識を失った場合や、一人いる時に症状が出現した際にも周囲の人にクルミアレルギーがあることを知らせることができます。

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金 尚英

執筆者

金 尚英KIN NAOHIDE

副院長

赤羽小児科クリニックの副院長、金 尚英(きんなおひで)です。私自身、二児の父親として子育てに奮闘する毎日を送っております。
その実体験を活かしながら、皆様のホームドクターとして、信頼に応えられるようこれからも学び続け、成長してまいります。
必要な時にいつでも頼れる存在として、ちょっとした体調の不安や育児のお悩みなども、ぜひお気軽にご相談ください。

所有資格

  • 2011年 日本大学医学部医学科 卒業
  • 2011年4月〜 川口市立医療センター 初期臨床研修(小児コース)
  • 2013年4月〜 日本大学医学部小児科入局 附属病院にて後期研修
  • 2015年4月〜 あしかがの森足利病院へ医局派遣
  • 2015年10月〜 沼津市立病院へ医局派遣
  • 2016年10月〜 都立広尾病院へ医局派遣
  • 2020年4月〜 赤羽小児科クリニック 副院長就任