免疫療法は花粉症、通年性アレルギーに対する体質改善の治療とも言われ、根本的治療として期待されています。
薬物療法に比べて長期的に症状を寛解に導く可能性があります。
また、注射による皮下免疫療法に代わり、舌下免疫療法が出現し患者様も治療を続けやすくなりました。
治療選択のご相談や治療開始にあたっての事前検査なども随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
Doctors Fileさんの取材でも免疫療法に関してpick upしていただき、院長が特徴などを説明しています。是非ご覧ください。

舌下免疫療法(スギ、ダニ)
スギアレルギー、ダニアレルギーが確定した患者様に対して舌下免疫療法で治療を行います。
毎日1錠、決められた時間に舌下保持の後内服(もしくは吐き出す)します。
スギ花粉飛散時期の治療開始は避けるように推奨されています。
そのため、例年5月のGW明けから新規の患者様の治療は開始可能です。
治療期間は3〜5年間が推奨されており、治療終了後もしばらく効果が持続します。
患者様によっては治療開始後、初回のシーズンから効果発現が認められます。
初回治療は院内で舌下錠を内服していただき、アレルギー症状が出ないことを確認します。
30分ほどの症状観察が必要なため時間に余裕を持って来院してください。
費用
小児は医療助成が利用できるため基本的には自己負担なく治療可能です。
東京都は高校卒業まで無料で治療を受けることができます。
高校卒業相当以上の年齢の方は保険診療になります。
自己負担3割の場合、診察費用・薬剤料も含めて、自己負担で月々2000円前後です。
治療期間と効果の持続期間
舌下免疫療法の治療期間は3〜5年とガイドラインでは設定されております。
これは効果を定着させ、治療終了後もアレルギー症状軽減効果を持続させるために必要な期間とされています。
治療効果の発現はもっと早く「舌下免疫療法開始2〜4か月で症状が改善し始める」とする論文があります。
( J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8(4):1234-1245.)
実臨床でもそれくらい早く効果が出る方は多くいらっしゃいます。
一方で治療効果は永続的には続きません。
4〜5年治療を行い、治療終了後どれほど効果が持続していたか調べた研究は散見されます。
(J Allergy Clin Immunol. 2010 Nov;126(5):969-75.など)
ここでは治療終了後最大8年間効果が持続したという記録があります。
しかし、アレルギーの種類や元々の重症度や個人の特性などの様々な要因で持続期間はかわるため一概にどれほどもつということは正確には言及できません。
当院では、小児では長く治療を行なった方が、治療終了後の持ち越し効果も長くなるため、できる限り長期の治療を勧めております。
舌下免疫療法の副次的効果
また、最近では舌下免疫療法を行うことで主作用(アレルギー症状の軽減)以外にも以下のような恩恵を受けられることが示されています。
新規アレルギーの獲得抑制
最もインパクトがあるものは免疫療法を行うことで「現在感作していない新しいアレルギーの獲得」を抑制できるというものです。
そのため、当院ではダニアレルギーやスギ花粉症のお子さんには積極的に舌下免疫療法を行うことを勧めております。
以下がその裏付けとなる研究です。
Di Rienzo ら(1999, JACI)
花粉症の小児に舌下免疫療法を3年間行った群では、新しいアレルゲンへの感作(特にダニや他の花粉)が有意に少なかった。
→ 舌下免疫療法群:約30%、非治療群:約80%で新規感作
Des Roches ら(2007, JACI)
ダニ単独アレルギーの小児を対象。舌下免疫療法を行なった群では追跡中に他アレルゲンへの感作が有意に少なかった。
EAACIガイドライン(2018, Allergy誌)
小児での舌下免疫療法は「新規感作予防や喘息進展抑制の可能性」があり、早期導入を勧める根拠とされている。
Calderón ら(2011, JACI Review)
複数の研究をまとめ、「舌下免疫療法は新規感作の抑制に寄与する可能性が高い」と結論。ただし、研究デザインや追跡期間の不均一性から“確実な結論”ではなく、「可能性が高いエビデンス」と位置づけられた。
生活の質(QOL)の改善
鼻・眼症状の改善により、睡眠の質が改善し、仕事や学業の効率上昇、日常生活への支障の軽減が見られます。実際に日中の集中力や学業成績へのプラス効果も報告されています。
症状に対する薬が減らせる
治療を行うことで症状が軽減するため、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)や点鼻ステロイド薬の使用が減ることが示されています。複数研究をまとめた論文では薬剤使用が40%以上減ったとまとめられています。
気管支喘息への進展抑制
舌下免疫療法を行うことで気管支喘息への進展を抑制できる可能性を示す研究は複数あります。舌下免疫療法により、持続性喘息や気道過敏性が抑制されるためだと考えられています。また、近年の大規模研究でも喘息の新規診断や増悪のリスク低下効果があることが示されております。
皮下免疫療法
アレルゲンを皮下注射で投与する治療法です。
週1回の通院と、注射が必要になります。
メリットとしては統計的に舌下錠より効果が高い点にあります。
デメリットとしては月1〜数回程度通院を要する点と皮下注射が必要になることです。
免疫療法に関しては、患者様と相談し治療選択をさせていただいております。
希望の治療がある場合は、お申し出ください。
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執筆者
金 尚英KIN NAOHIDE
副院長
赤羽小児科クリニックの副院長、金 尚英(きんなおひで)です。私自身、二児の父親として子育てに奮闘する毎日を送っております。
その実体験を活かしながら、皆様のホームドクターとして、信頼に応えられるようこれからも学び続け、成長してまいります。
必要な時にいつでも頼れる存在として、ちょっとした体調の不安や育児のお悩みなども、ぜひお気軽にご相談ください。
所有資格
- 2011年 日本大学医学部医学科 卒業
- 2011年4月〜 川口市立医療センター 初期臨床研修(小児コース)
- 2013年4月〜 日本大学医学部小児科入局 附属病院にて後期研修
- 2015年4月〜 あしかがの森足利病院へ医局派遣
- 2015年10月〜 沼津市立病院へ医局派遣
- 2016年10月〜 都立広尾病院へ医局派遣
- 2020年4月〜 赤羽小児科クリニック 副院長就任