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消化管アレルギーについて

消化管アレルギー(FPIES)

このページでは最近増加していると言われている、消化管アレルギーに関して解説します。

消化管アレルギーという疾患名はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、実はとても患者さんが多い疾患です。
特に最近では小児の消化管アレルギーが増加してきていると言われています。
実臨床でも特に鶏卵の「卵黄」による消化管アレルギーの患者さんがよく来院されます。
実際に子育てをしている中でも遭遇する可能性が高いため、今回ここで解説致します。

消化管アレルギーとは?〜概要〜

実は「消化管アレルギー」という症状や状態・疾患名には様々な状態・疾患が含まれることになります。
大きく分けるとIgEの関与の仕方で分けることができます。
①IgE依存性(一般的な即時型食物アレルギーで消化管症状がメインの状態をいう場合)
②IgE非依存性(食物蛋白胃腸症:今回取り上げるFPIESを含む)
③IgE混合性(好酸球性消化管疾患)

今回は②のカテゴリーに属する「食物蛋白誘発胃腸炎症候群(Food Protein Induced Enterocolitis Syndrome)」の解説を行います。

食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPIES)

以下、食物蛋白誘発胃腸炎症候群を「FPIES」(エフパイスと読みます)とします。
FPIESは特定の食品を摂取した後に引き起こされる非IgE依存性の食物アレルギーの一種です。主に乳児や幼児に多く見られ、消化管に特異的な反応を引き起こします。

症状

FPIESの症状は急性型と慢性型に分けられます。
患者さんの大半(9割以上)は急性型となっており、慢性型は稀です。

急性型

  • 食品摂取後、1~4時間以内に症状が現れる。
  • 主な症状:
    • 反復する嘔吐
    • 水様性下痢(数時間遅れて現れる)
    • ぐったりする(元気消失)
    • 重症の場合、低血圧ショック症状を引き起こすこと

特に初めて食材をとった際に嘔吐が出現しFPIESが疑われます。また、アレルギーのため摂るたびに繰り返すことが特徴です。
量にも依存するため、微量であれば問題なかったが、量を増やしたら出現することもあります。
即時型アレルギーとの見分け方は、FPIESでは咳や皮膚症状が出現することは稀です。
症状自体は長引かないため、摂取後数時間で出現しすぐに治ることが多いです。

慢性型

  • 主に乳児に見られる。
  • 毎日継続して原因食品を摂取した場合に発生
  • 主な症状:
    • 持続する嘔吐
    • 慢性的な下痢(血便を伴うことも)
    • 成長障害や体重減少
原因食材

成育医療センター、筑波大学の先生方がまとめた日本の13施設の多施設共同研究でFPIESの実態が報告されています。

本研究では、食後1~4時間以内に遅延性の嘔吐を経験した小児225人を対象に、カルテデータの解析による原因食物や症状の聴取、国際的な診断基準との適合性、血液検査による特異的IgE抗体の抗体値などを調べました。

その結果、FPIESの原因食物として鶏卵(141人:58.0%)が最も多く、大豆(27人:11.1%)、小麦(27人:11.1%)、魚(16人:6.6%)、牛乳(15人:6.2%)、貝(9人:3.7%)と続きました。また、鶏卵のうち94.3%(133人)は卵黄が原因でした。

論文タイトル:Differences in Characteristics Between Patients Who Met or Partly Met the Diagnostic Criteria for Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome (FPIES)
『FPIESの診断基準を満たす患者と、部分的にのみ満たす患者の違い』
雑誌名:Journal of Allergy and Clinical Immunology in practice

上記のように、臨床の現場でも出会うのは鶏卵の卵黄でのFPIESが圧倒的に多くなります。

(表:国立成育医療研究センターHPより:https://www.ncchd.go.jp/press/2024/0423.html)

診断

<FPIESの国際的な診断基準>

「主要基準」を満たした上で、「副基準」のうち3つ以上を満たした場合に、FPIESと診断されます。


主要基準

原因食物を摂取後1〜4時間後に嘔吐があり、IgE依存性食物アレルギーで認められるような皮膚・呼吸器症状がない



副基準(9項目)

➀同じ食物を摂取した際に、繰り返す嘔吐が2回以上ある、②2つ以上の異なる食物に対して、摂取後1〜4時間後に繰り返す嘔吐がある、③極度の活力の低下、➃血の気が引き、青ざめる(蒼白)、⑤緊急受診の必要がある、⑥輸液をする必要がある、⑦食物摂取後24時間以内の下痢(通常5〜10時間後)、⑧血圧低下、⑨低体温

治療(対応方法)
急性期治療

まず、急性反応の症状に対しては軽症の場合は経過観察で構いません。
嘔吐や下痢が強く中等症の場合は点滴による脱水の補正を行うこともあります。
また、重症で血圧の低下を伴うようなショック状態には補液に加えて、アドレナリンやステロイド剤の投与も検討します。

 

FPIES自体の予後〜治癒に向けて〜

FPIESの予後は基本的には良好で自然軽快することがほとんどです。
そのため、原因食材を特定した後、まずは完全除去を行います。
その後、時期をみて専門医の指示の上で食物負荷試験を行い安全を確認し、徐々に増量します。
一定量食べれるようになったら除去終了となり、治癒(克服)となります。

 

今回は比較的新しい疾患概念である、消化管アレルギー(FPIES)の解説を行いました。
FPIESに関しては現在も年々新しい知見が出る疾患のため、今後も情報をupdateし患者さんの役に立てるよう精進したいと思います。
今後もこの記事の上に、新しい情報を追記していく予定です。

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